≡ Sturm und Donnerschlag ≡
風と木の詩を読んでみた
いま「地球へ…」のリメイクアニメが放送中だ。その影響で原作をウィキペディアで調べたところ、原作者は「テラへ」と「風木」の2作品をもって『小学館漫画賞』を受賞していることを知った。風木のことは全く知らなかったため、どんな作品か興味がわいた。
居住区の区立図書館に風木の文庫版が全巻所蔵されていたので、全10巻をまとめて借り、読み終わった。かかった日数は4日……興味があって借りた割に読破まで時間がかかった。
第1巻の最初の見開きから驚きが連発した。これは他人の目が多い場所で読んではいけないと思った。もともと自分は男同士のまぐわいが苦手であるうえ、風木は“少年愛”要素が多く含まれていて、あの内容自体に関心があったわけではない私は、1巻の時点で気分が悪くなってしまった。先の巻になかなか手が伸びず、読破は諦めようかとも思った。
脂汗をかきながら2巻の後半まで進んだとき、ちょっと気を引かれるエピソードが始まり、私のページをめくるスピードに調子がでてきた。そこから魔性少年ジルベールの生い立ち編に突入したのだ。読書を続行した結果、そのエピソードでもさらなる嘔吐感に襲われるのだが、あんなにイミフメイな少年の人格形成環境を垣間みることができた。
ジルベールにつづいてセルジュの過去編が始まった。セルジュの出生と成長にも波瀾万丈はあったが、ジルベールと比べたらとても健康的な育ち方でだいぶん私の精神を休ませてくれた。
セルジュの過去が終わってからは、風木の雰囲気になんとかついていけたのでそのまま5巻6巻を読みにいけた。巻数は半分を越えて、私は「ここまで拡げたフロシキのたたみかた(完結のしかた)を見たい」と思い、少し読むスピードを上げて一晩に10巻まで駆け抜けた。
セルジュとジルベールの仲について、物語の収拾方法としては残念なかたちだなと思った。長編作品によくあることだ。生まれた人間に決して欠けることはない≪生と死≫を用いて風木を終わらせたことは安直だったと思う。(赤ちゃんと僕でも感じたことだ)風木の連載当時、リアルタイムで私が読者だったら、ここまで作品についてきたのにこんなお終いはないよ!と落胆したかもしれない。
全編とおして思ったことは、サブキャラのカールをもっと活かしてほしかった事、山場でセルジュとジルベールの仲ができあがった際、二人の心境がよく理解できなかった事。まあ、これは図書館でタダで読めて良かったよ。
杉並区立図書館は、マンガであっても文化史・漫画史に大きく名を残した作品はだいたい所蔵してある。検索したら読んでみたいマンガがぽろぽろ出てきたから今年は図書館をよく使わせてもらおう。(大和和紀や萩尾望都、武内直子は納得できるが、最近のまんがラブ☆コンが図書館に入っている。文化的価値があるとは思えないが)